特別展「横浜の仏像」⑤(光明寺の菩薩像)
山本勉先生は無名の仏像から運慶作品を見入出す観察眼をお持ちだ。それがこの講演でも遺憾なく発揮されたのが南区光明寺の菩薩像に関する紹介の場面だった。講演では鑑真来朝から平安前期の金銅仏・乾漆像から木彫仏への劇的な変遷が語られ中央の木彫は整理・洗練されているが、地方の木彫は個性・野趣あふれる仏像との説明だった。光明寺菩薩像は保存状態が悪くいかにも野趣あふれる仏像だが中央の比較する仏像は京都遍照寺の十一面観音だという。遍照寺の十一面観音は仁和寺と御室派のみほとけ展で友人とうっとりながめるほど美しい仏像だがとても今回展示の菩薩像と共通点が見いだせなかった。ところが帰って図録をよく読むと、髻を結い、その正面に宝冠を付け、条帛・天衣を懸け下半身に折り返し付きの裙を着ける菩薩像とのこと。発見の逸話として法事で訪れた光明寺の玄関先に置いてあり、その価値を見出した山本先生は審議委員をやっている横浜市に法事そっちのけで仏像調査に入ったとの話であった。図録の執筆者も保存状態は良好でないが、古代彫刻ならではの充実した存在感にはとくに賞すべきものがあると記載してあった。さすが山本先生と感心した仏像だった。
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