2012年10月7日日曜日

東京国立博物館140周年特集陳列館蔵仏像名品選②

今回の東博140周年館蔵仏像名品選で初めて出会ったのがこの日光菩薩坐像だ。奈良時代の木心乾漆造(もくしんかんしつづくり)の仏像で、当初は京都亀岡の金輪寺の本尊薬師如来の脇侍でのちに京都高山寺に移ったとのこと。現在も本尊は高山寺に月光菩薩は東京芸大の所蔵になっている。切れ長の目をした豊満な顔立ち、弾力のある引き締まった肉体表現がすばらしい。髪の毛の筋をていねいに表し、体を覆う衣の柔らかな質感も自然で、木屎漆(こくそうるし)の技法がすばらしい。木屎漆とは漆に小麦粉を混ぜて練った麦漆に木の粉や植物繊維を混ぜたペースト状のもので、頭髪や衣の質感を表すのに効果的だ。この仏像はその技法を遺憾なく発揮した名品だが、わずかに手の一部が破損しているのがおしい。そうでなければ国宝級の仏像で天平時代を代表する名品である。いつか薬師三尊が揃って展示されれば是非見に行きたい仏像だ。

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