新指定国宝・重文展②(宝山寺の制多迦童子)
先日拝観した宝山寺の制多迦童子をはじめて知ったのが、平成20年8月に購
入した「美仏巡礼」という雑誌だった。そこで慶派の松本明慶氏が次代の国宝として運慶の六波羅蜜寺「地蔵菩薩」・快慶の醍醐寺「弥勒菩薩」とともに紹介されていた。その仏像が東京で見られるとのことで、期待していたが、期待を裏切らない出来栄えの仏像だった。童子の右顔と左顔では印象がちがうなと思ったが、松本明慶氏によると「顔の正面に向かって右側は子供の顔に見える一方で、左側から眺めると思慮深い大人の顔に見えることでしょう。子供と大人、動と静が共存しています。」とのこと。この仏像の作者は文化庁の解説によると宝山寺を創建した湛海(たんかい)律師の仏像製作を支えた院達(いんたつ)という仏師とのことだが、松本明慶氏によると「湛海律師自身がプロデュサーやディレクターの役割を担って製作したと思われます。」とのこと。童子像には見事な截金が施されていたが明慶氏は「仏師が木に彫ったあとの工程で活躍する塗師らの集団も、湛海律師が徹頭徹尾指揮したことで、彼が思い描く世界をそこに実現できたのだと思います。」とのこと。湛海律師の関与を大きくとり上げた内容になっていた。今回重要文化財展このほか矜羯羅童子も出品されていたが他に指定された不動明王を含めての五体の仏像と倶利伽羅竜王像についても指定されたが、出品は二童子だけだったことが残念だ。この仏像に出会えたことを感謝して会場をあとにした。
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