インドの仏展②サルナートの仏立像
インドの仏展で最初に出会うのが、このサルナートの仏立像だ。サルナートはブ
ッダ(釈迦)が初説法を行った初転法輪の地だが、その姿を描いているのだろうか。右手は施無畏印(せむいいん)、指にある水かきに似た縵網相(まんもうそう)、華麗な植物文様によって装飾された光背は日本の仏像でも馴染み深いもので、インドから一気にアジアを抜けて日本へのつながりを感じさせる仏像だ。おだやかに半分閉じた目の表現やふっくらした唇に惹かれた。深い瞑想の静けさを感じる仏教彫刻は理想的な完成美として東アジア美術に大きな影響を与えたという。奈良薬師寺の薬師如来につながる作品だ。いとうせいこう氏が「シースルー」と呼んだ薄い衣の表現も見事だ。材質は砂岩のため、石彫刻でしか表現できない制約があるがそれを感じさせない見事な彫刻だ。この作品をきっかけに「インドの仏」の世界に導かれる、オープニングにふさわしい作品だった。
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