2011年3月13日日曜日

興福寺南円堂の不空羂索観音(ふくうけんさくかんのん)

平成20年秋に奈良を訪れた。きっかけは西国三十三ケ所巡礼特別御開帳で南円堂の不空羂索観音が通常10月17日だけしか御開帳されないのだが、この年は約1ケ月開帳されるというからだ。興福寺不空羂索観音は大仏師運慶の父康慶の数少ない作品のひとつで鎌倉時代の仏像だ。さすが御開帳とあって善男善女が多く参拝に来ており、南円堂に列ができていた。お堂の中に入ると、国宝の不空羂索観音を中心にそれを四天王が囲む配置となっている。本尊の不空羂索観音は像高4メートル近くで、台座・光背を合わせるとゆうに5メートルをこえる巨像だ。御開帳の日のため手から五色の糸で作られた羂索が伸ばされており参拝客と結縁するしかけとなっている。本像は平家の焼き討ちにあった天平時代の不空羂索観音を九条兼実の指導で正確に再興したとのこと。光背や台座の形も天平の古典様式が踏襲されている。うねりの強い目鼻立ちや大きな耳輪、指先のつめの先まで天平仏の風が示されている。われわれは諸仏に圧倒され立ち去りがたい思いを胸に南円堂を後にした。

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