特別展「東福寺」⑥(東福寺の多聞天)
特別展「東福寺」は絵画や書が展示の大半を占めたため、最初は興味がなかったが、東福寺四天王多聞天が出展されるため、急遽行くこととした。運慶展で出展されていたが、今度は露出展示でより近くから拝観することができた。京博主催の展覧会ではよく行われるが、作品保護のため兜を外しての展示だったのが、邪鬼を二匹踏みつけ周囲を威嚇する表情ながら、どこかしら可愛らしく女性好みの仏像になっていた。本尊と同じく三聖寺にあった像を昭和初期に移動したようだ。製作年代は他の四天王と異なり鎌倉初期。像高100センチ余りの小像ながら裙の裏側などに群青色の彩色が良く残っている。鎌倉時代の彩色の決まりに沿って「紺丹緑紫」が使われている。願成就院の運慶毘沙門天の作風に似た腕を水平に挙げる表現があるが、運慶作品とはなかなかいかないようである。同じ小像の運慶作品には高野山金剛峰寺があるが運慶が関与した矜羯羅・制吨迦童子ではなく、恵喜童子や清浄比丘など近い作風となっていることや金泥塗の技法が運慶の時代より新しい技法のため山本勉先生も運慶作品と認めなかったとのこと。それでもすばらしい仏像であるには違いない。まだどこかに運慶仏があることを信じて会場を後にした。
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