天台寺の聖観音
岩手仏像探訪の旅最終日、盛岡から新幹線で二戸に向かい予約したタクシーで初めて天台寺を訪れた。古代最北の寺院天台寺は当時の日本の統治領域から北にはみ出して整備された。タクシーを降りると最果ての寺院と思えないほどの立派な寺院だった。江戸時代盛岡藩主南部氏による再建だった。二つ収蔵庫や仁王門から続く灯篭群は平成の修理で作家で天台寺名誉住職の瀬戸内寂聴氏のご尽力のたまものだろう。収蔵庫には展覧会で何度かみた仏像が拝観できた。やはり魅力的なのは聖観音で116センチの小さい仏像だが鉈彫りと呼ばれる東国でよく見かける仏像様式だ。体にノミによる横縞模様が施された仏像で意図的にノミ痕を残して仕上げとした鉈彫仏は関東や東北を中心に数十体ほど確認されたいるが、ここ天台寺の聖観音が最高傑作であろう。以前は未完成仏とみる説もあったが天台寺像の背面は平彫で前面の端正なノミ痕を残している。霊木カツラに宿る神が、仏の姿を借りて顕われたようだ。あの井上正先生も鉈彫りのご本尊こそ、その化現の瞬間を彫ったものだと唱えられたとのこと。二戸にタクシーで戻りEUのバイヤーの舌をうならせた北三陸洋野町のウニを購入し盛岡に戻った。
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