2014年5月17日土曜日

方廣寺の宝冠釈迦如来

今週の日曜日に東博の「新指定国宝・重要文化財展」を見に出かけた。今
回指定された重要文化財のうち、私が注目したのは静岡県浜松市にある方廣寺の宝冠釈迦如来だ。南北朝・室町時代に活躍した院派の作品だ。院派は慶派と並ぶ仏師「定朝」の流れをくむ一派で、平安時代に一世を風靡した仏師集団だ。鎌倉時代に入ると、鎌倉武士に貴族に人気がある院派はきらわれ、奈良仏師の慶派が好まれていたとは、山本勉先生の本を読んで知っていた。南北朝・室町時代に入ると、足利尊氏に重用された「院吉」を初めとした院派が勢いを盛り返した知ったのは、今回の「宝冠釈迦如来」を見てからだ。足利氏に接近した「院吉」が凋落(ちょうらく)の一途を辿りつつあった院派を再生に向わせた記念碑的作品となっている。元は茨城にある佐竹氏の寺から明治になって移された仏像だ。「院吉」は足利家の菩提寺「等持院」の本尊を製作していることから、ここに運慶仏のときにみられる主従が同じ仏師に依頼する密接な関係が見て取れる。普段は光背があり華やかな雰囲気を持つ仏像だが、今回は光背をはずしての展示であったため、より仏像の作品としてのすばらしさが実感できた。私は展示ケースの前で長いこと動くことができなっかた。最後にもう一度釈迦如来を見て東博をあとにした。

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