2013年3月30日土曜日

特別展「飛騨の円空」⑥

円空は奈良に遊学し多くの古典な仏像を学んだと伝えられる。実際に法隆
寺の百済観音を彷彿(ほうふつ)とさせる仏像も彫っており、古典の影響が彼の作風に出ている。しかし円空がすごいのは古典の仏像を彼なりに大胆にデフォルメしたり省略するところだ。愛染明王は西大寺像が有名だが、彼が飛騨に残したこの像は、持物に弓矢ではなく金剛杵と金剛鈴を握っている。獅子冠もどこかユーモラスであり心なごませる。顔も口の端をきゅっとあげていて不適な笑みをうかべているがどこか癒される。心疲れた方は是非会場に足を運んでみることをお勧めする。

2013年3月23日土曜日

特別展「飛騨の円空」⑤

円空は歌人としても知られていて千七百余の和歌を集めた「円空歌集」が残されている。その円空が歌聖としてあがめていたのが、奈良時代の歌人柿本人麿だ。円空は生涯多くの柿本人麿像を彫って自ら寄進したという。荒子観音寺の人麿像には長いひげが彫られているが、この像にはない。この像の何と言ってもいいところは、その微笑である。それは展覧会図録を見てみるとよくわかる。ほとんどの仏像が微笑んでおり、会場全体がやさしい雰囲気につつまれる不思議な空間になっている。幼い頃母親をなくし、つらい目にあったからこそ多くの微笑みの仏像をのこしているのではないか。円空の人柄さえも感じられる展覧会場であった。

2013年3月16日土曜日

特別展飛騨の円空④

以前紹介した如意輪観音に並んで展示されていたのが、この弁財天立像だ。円空の特集を組んでいる「美術手帖」でこの弁財天がある飛騨国分寺のレポートが載っていて、厨子の前で御前立ちのように展示されている写真を見たが、会場でもその存在感は十文発揮している。「バカボンド」の作者井上氏によると、「マンガの表現と近い。省略して図案化しているし、彫られた線にスピード感がある。」とのこと。むしろ私はその表情にグッときた。円空は数多い癒しの表情の仏像を残しているが、この弁財天は1番だと思う。会場でその表情にみとれていつまでも立ち去りがたい気持ちになった。これから「癒しの表情の仏像」を求めて全国の円空仏を訪ねる旅にいつか出ようという衝動にかられた。

2013年3月10日日曜日

快慶様式な阿弥陀如来に出会う

本日仏像クラブで神奈川県大磯に出かけた。他の方のブログに写真が掲載されていた快慶風な阿弥陀如来がある善福寺と慶派の地蔵菩薩がある、慶覚院に向かった。善福寺は大磯の風情ある松並木を過ぎた町はずれにある、趣がある木造の本堂があるお寺だ。ご案内の方より本堂が開いているとのことで、中に入ると目の前にご本尊がおられた。合掌をしてから近くで見てもよいとのことでじっくりと鑑賞できた。像は体の均整もよく、顔だちも張りと若々しさを表したいい仏だ。像高は1メートルでいわゆる三尺阿弥陀立像だ。これは快慶が最も得意とする仏像で、東大寺の快慶作阿弥陀如来が有名だ。ご案内の方から配られた資料には、快慶の弟子の作品ではとの見解であった。善福寺には親鸞聖人像と伝えられる上人像もあり玉眼のみごとな上人像だった。善福寺を出て慶覚院で慶派の地蔵菩薩を見てから平塚で食事をして解散した。このたびの大磯の仏像めぐりはとても心洗われる時間だった。

2013年3月2日土曜日

祝。新指定国宝

今週の水曜日に文化庁のサイトを見たら、新指定の国宝・重要文化財の報道発表が掲載されていた。その発表文を見て驚いた。私が2010年奈良に行ったとき訪ねた安部文殊院の快慶作文殊菩薩及び眷属と仏像クラブで何回も訪問した伊豆願成就院の運慶作薬師如来・毘沙門天・不動明王及び眷属他計3点が国宝指定の答申がなされたとの発表だった。特に願成就院の5体の仏像については、彫刻の部では中部地方初とのこと。誠に喜ぶべきことだ。特に願成就院はU案内人と平成20年に初めておじゃましたとき、お寺の奥様が運慶の仏像が国宝に指定されていないことを残念がっていたことを昨日のことのように思い出される。願成就院のある韮山は堀越公方がいたところで、戦国の混乱期によく仏像を護ってくれたものといまさらながら関心する。本尊はもとは玉眼が入っていたが今はなく、手も一部破損していていたいたしいが、「深く彫られ奔放に乱れてうねる衣文の趣は、平安時代の作品とは隔絶したもの」と山本勉先生も別冊太陽仏像で書いている。例年4月に東博で「新指定国宝・重要文化財展」が開催されるが、今年は快慶や運慶が展示されるのだろうか。吉報をまとう。