2025年9月26日金曜日

佐渡・新潟仏像探訪記④(長谷寺の五智如来)


 佐渡に来て最初に訪れたのが長谷寺だった。佐渡は運転手の話によると大佐渡・小佐渡にそれぞれ山があり真ん中に国中平野が通っておりお寺は山側の麓に建っているとのこと。長谷寺は小佐渡の麓に立つお寺で、事前に電話連絡し五智堂の五智如来を拝観したい旨伝えてあったが、つくなりご高齢の住職から再度五智堂も拝観したいか確認があり,「ぜひ拝観したい」と申し上げる一幕もあった。国指定重文の十一面観音立像3体は秘仏のため見られないので写真で拝観した。次の部屋には1メートルに満たない素朴な十一面観音立像があり、上唇がふくれ、首がこころもち前に出したユーモラスな風貌だった。横には矜羯羅童子。平安初期の作という童子は、頭に頭巾をかぶり、崩れたバランスをかろうじて保ちながら立っていた。表情はほとんど消えかかっているが、優しい女性的な印象だ。住職も制多迦がないことをしきりに残念がったが、見仏記には「制多迦も出れば、即国宝だと言うんですが」と誰かが過大な期待をもたせたみたいだ。事前に住職から五智堂の階段は200段と聞いていたが、建物内部からあがると石段はたいしたことなかったが履き物を借りる段でどれもまともでなくスリッパで石段を上がるはめとなった。住職に扉を開けてもらうと中に金ピカの五智如来が安置されていた。五智如来は江戸時代の制作だがお堂は全国でも数少ない大塔形式の内陣で貴重だ。大日、薬師、宝生、阿弥陀、釈迦。オールスターはどれも平たい顔をし、一方向を向いている。見仏記に書いてあった大日の倒れた光輪はかたづけられたらしくなかった。長谷寺は全体を通してさびれた感じだった。後を継ぐ人もなく自費で修繕しているという涙ぐましいお話を聞くと今見といてよかったと思う。ご朱印をいただきお寺をあとにした。佐渡最初の寺からアドベンチャーな体験ができたが今のお寺がかかえる問題を考えさせられる訪問だった。


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