2023年8月11日金曜日

特別展「聖地南山城」④(常念寺菩薩形像)


 2017年の秋京都非公開文化財特別公開でこの仏像に初めて出会った。常念寺で説明にあたったのは「南山城の会」の方で熱心説明いただいたのを思い出した。国立博物館への出展は今回が初で、2014年の京博「南山城の古寺巡礼」には出展かなわなかった。常念寺のある精華町は奈良県境にある町で文化的には奈良に属している。祝園(ほうぞの)神社の神宮寺にあった神像で、江戸時代には薬師如来として祀られており、図録にはかつての薬壺をもった姿の写真が掲載されていた。奈良博の山口氏によると頭体幹部は両手前膞を含んでケヤキとみられる広葉樹の一材より彫りだし、体部背面に内刳りをほどこした蓋板をあてている。両手先、両足先、両手前膞外側に垂下する天衣遊離部、台座、持物は後補。眉を連ね、唇を突き出した森厳な表情や肩幅の広い堂々たる体つき胸腹の括りを深く彫り込んで充実感を強調する表現には、平安時代初期の特色が顕著で、身体に密着するように薄手にあらわされた着衣や腕前でW字状に絡む天衣に古様が認められる。天冠台や臂釧にみる花形飾りは珍しい。翻羽を交えた衣文の彫が浅く、整理が進んでいることなどから、制作は九世紀後半から十世紀初頭にかけてと推察されると解説している。紙面では語りつせない魅力ある仏像だった。


0 件のコメント:

コメントを投稿