2021年10月23日土曜日

特別展「聖徳太子と法隆寺」⑫(伝橘夫人念持仏)

 

特別展「聖徳太子と法隆寺」の最後の展示が伝橘夫人念持仏だ。2009年の春、「国宝阿修羅」展で初めて目にしたがその繊細な鋳造技法に驚かされた。阿弥陀三尊像は蓮池から立ち上がる三茎の蓮華座の上に表され、その背後に据えられた後屏には上方へとたゆたう天衣をまとった化粧菩薩がそれぞれ自由な姿態を見せている。後屏の上部には七体の化仏が表されており、彼らと脇侍の二菩薩がやがてたどり着くであろう仏の境地を示している。生命感に満ち溢れた阿弥陀浄土のさまが、実にみずみずしく立体的に表現されている。写真家小川好三氏もこの後屏に注目しており、ヤマケイ仏像カレンダーの今月はそこに表された化粧菩薩をズームした写真を載せている。本展では阿弥陀三尊と後屏を厨子から出したより感動的展示となっており、三田学芸員の腕の見せ所となった。三田学芸員は最後に仏教を中心とした聖徳太子の偉業はわが国にとって大きな基礎となった。1400年遠忌というこの機会に令和の多くの人に聖徳太子と法隆寺に思いを寄せ、新たな時代を築いてく糧となることを願うものであると結んでいる。

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