仏像クラブの年間計画になかったこの展覧会をあえて追加したきっかけにな
ったのが、この四天王寺の阿弥陀如来の踊る両脇侍像だ。このヨガをしているような片足を挙げるポーズの仏像をぜひ見てみたいと感じた。最近BS日テレの「ぶらぶら美術館」に三井記念美術館の清水館長が出演し、女性学芸員とともに運送会社のトラックに便乗し東・西日本のお寺や博物館を巡って借りてきた肝いりの仏像ばかり展示したとのこと。お話によると両手は後補でもとは平等院の雲中供養菩薩のようなもので平等院像より古い平安時代の仏像とのこと。図録によると昭和9年にお堂の厨子から発見されたが阿弥陀如来とは材質が違うので本来一具ではなかったと考えられる。片足を後ろ斜めに上げ、軽やかに舞う姿は日本の仏像では異色とのこと。後ろ姿を直接見えないのが残念だが、話題になったので四天王寺でも公開されるのではないか。ヨガポーズの菩薩像に見入ってしまった。
昨年春に行った奈良博開催の「快慶展」には80体以上の快慶仏が集合したた
め、第七章「安阿弥様の追求」のころには少々ばて気味になっており集中力が途切れてきていた。快慶は多くの三尺阿弥陀を残しておりここにあげる八葉蓮華寺の阿弥陀如来の快慶無位時代の名作と言われるがあまり印象に残っていなかった。近頃見た写真でその素晴らしさを確認したぐらいだ。そういえば、「TV見仏記」の「大阪ひっそりおわす編」のカンテレドーガの表紙の写真がこの八葉蓮華寺の阿弥陀如来であることからも名仏であることは確かであろう。図禄によると信西入道の孫・恵敏が願主となって造像されたことが納入品からわかった。恵敏は大寺院の要職を務め阿部文殊院文殊菩薩や東大寺僧形八幡像の願主にもなった僧だ。球体を感じさせる丸みのある頭部や、やや切れ上がった目尻、小さめにあらわされた口元などの特徴が印象的だ。秘仏のためめったに拝めない貴重な仏像に会うことができたことに感謝したい。
「仏像の姿(かたち)」展が開催されている三井ホールの1Fにはこの展覧
会の目玉である不動明王と弥勒菩薩とこの四天王寺十一面観音の顔のアップのパネルがディスプレイされており入館者を楽しませてくれている。四天王寺は聖徳太子創建のお寺だが、この十一面観音は鎌倉時代作の寄木造で頭に十面の頭上面を表し、左腕は曲げ持物を持つようなポーズをしており右手は垂下し手を正面に向けて、すべての指をを伸ばし、蓮華座の上に立つ。図録によると頭体幹部は左右二材矧ぎとする寄木造と言うが、それを感じさせないきれいな出来の仏像だ。頭髪や唇に一部彩色があるが、それ以外は素地仕上げのところもよい。展示ケースの一番端での展示のため、横からのお顔をあまり見られないのが残念だったが、展覧会場には中央に休憩用の椅子も設けられており、ケース近くで見るよりこの仏像は少し離れて見るのが断然よい。U案内人と二人でうっとりとしばしこの十一面観音を眺めていた。
先月のことになるが、仏像クラブで日本橋の三井記念美術館に特別展「仏像
の姿(かたち)」を見に行った。入ってすぐに展示していたのが「県立金沢文庫」の展覧会でみた覚園寺の迦陵頻伽だ。他のメンバーは初めて見たらしく少し大きな声を出して美術館の警備員に注意されるほど色めきだった。その後は初めて見る仏像が多く、展覧会のパンフレットにもなっている個人蔵の「見えを切る不動明王」や四天王寺の片足を挙げて踊る阿弥陀三尊の両脇侍像など初めて見る仏像ばかりだった。副題に「微笑む・飾る・踊る」とあるように仏像の表情や彩色・装身具による荘厳や甲冑に着けられた獅噛などの表象を、動きとポーズでは体幹の支点や捻り、手足の動きによる歩み、走り、踏みしめ、蹴り上げ、などの動作に注目した展覧会でかなり面白い構成になっており飽きさせなかった。U案内人も興奮したらしく、一緒に仏像を近くから少し離れた表情を見て感動していた。個々の作品の素晴らしさは次回順次紹介していくが、今までの三井記念美術館で開催された仏像展の中で一番面白い展覧会であった。