2011年9月17日土曜日

高野山と紀州の仏像めぐり⑤(金剛三昧院の愛染明王)

この夏の旅行で泊まった高野山の宿坊は金剛三昧院だ。ここは北条政子の創建で境内には国宝の多宝塔がある立派な寺院だ。宿泊の決め手となったのが伝運慶作の「愛染明王」があるという事だ。着いた早々お寺の方より説明があり朝6時半から「朝のお勤め」があるので参加するようにとのこと。その際仏像に参拝できるとの説明だった。朝、講堂に集まり僧侶の読経と声明が静かな寺に響き渡った。しばらくすると宿泊客は本堂に招かれ、「愛染明王」とご対面できた。政子が頼朝の死後等身大の愛染明王を彫らせたと伝えらえる。写真で想像していたより大きくりっぱな仏像だ。愛欲の煩悩を悟りに変え、人との縁を結ぶ。手元から五色の紐が本堂の外まで伸びているのが象徴的だ。朝食後、境内を僧侶が案内してくれて、多宝塔のなかには大日如来が祀られているとの説明だった。北条政子・大日如来・愛染明王と聞いて私は春先に見た「運慶展」の「大威徳明王」を思い出した。運慶の最晩年の作と言われるこの像は大日如来・愛染明王と三体セットで実朝の乳母の自念仏となったとの記録がある。実朝の乳母に渡したのは、この愛染明王の試作品いわゆる試みの仏像で、完成品はここ金剛三昧院に実朝の母政子に運慶が造ったと考えられないだろうか。まだ見ぬ金剛三昧院の運慶作大日如来・大威徳明王に思いをはせながら高野山を後にした。

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