2010年9月23日木曜日
仏像クラブ活動報告(円成寺大日如来)
平成20年仏像好きなKさんと、奈良の寺めぐりをした。旅行3日目はタクシーで柳生街道を東へ30分ほど行った山あいの真言宗名刹・忍辱山(にんにくせん)円成寺に向かった。平成になってから再建された多宝塔の本尊として祀られているのが、運慶の現存する最初の作品《大日如来坐像》だ。円成寺は浄土式庭園の寺で奈良中心部より紅葉が進みいまが盛りだ。多宝塔のガラス越しに運慶の大日如来を見る。座っていても十頭身の見事なプロポーションなのはわかった。あちこち剝落しているが、非の打ち所がない顔の作りも、無駄のない細身の肉体も健在で、大日ならではの印を結ぶ指は少年のようにしなやかだ。特に気に入ったのが高々と結い上げられた髻(もとどり)だ。髪筋の彫りのみごとさは運慶ならではのもの。鑿(のみ)をあやつる天才的な力と、みずみずしい感性にあふれている。感動の余韻に浸りながら二人は奈良へ戻り帰路についた。
2010年9月18日土曜日
仏像クラブ活動報告(東大寺法華堂)
平成20年秋、紅葉が色づきはじめた大仏殿の裏道を登りながら二月堂・法華堂のある広場に向かう。法華堂のうす暗い堂内に十数体の天平仏が居並ぶ。湿気の多い堂内が不思議な感覚を与えた。土っぽい色の仏像たちは、もわりとこちらを包むような力を持っていた。その中で唯一かすかに光るのが、真ん中に位置する不空羂索観音菩薩像だ。ひたいに第三の目を持ちこちらを突き放すようにたっている。脇を日光・月光菩薩が固めておりこちらも秀作だ。日光像は大袖衣の上に袈裟を着け、片側に流れる動きのある衣文をつくるのに対し、月光像は襟の小さな大袖衣を着け、左右対称に腰帯を垂らす。両像は、指先だけを接して合掌し直立する共通のポーズをとるが、着物の形を変化させて、日光の動と月光の静とが巧みに対照される。法華堂の諸仏が3メートル以上あるため、日光・月光菩薩が小さく見えたが、あとで調べたら像高2メートルとのこと。お寺の説明を畳にすわって伺った。15分ほどかけゆっくり説明が聞けてラッキーだった。入江泰吉の東大寺仏像大版写真が1500円で売っていたいたので購入し、その日の宿に向かった。
2010年9月11日土曜日
奈良で生身の釈迦に出会う
昨年の7月、奈良国立博物館で「聖地寧波(ニンポー)展」が開催され京都清涼寺の「釈迦如来」が出展されというので、一人日帰り弾丸ツアーで見に行った。お寺では年2回遠くから拝めるが、真近に拝観できる機会はめったにないとのことで早速奈良に向かった。奈良国立博物館はすいていて会場には中世中国の交易都市寧波に関連する仏画が中心であったが、奥に清涼寺の釈迦如来がおられた。国宝である釈迦如来はインドから中国にもたらされた仏像を日本人僧が中国の工人に正確に摸刻させたという。本尊のお顔はひげを生やし、どこかインド的な顔だちだ。卵形の顔や縄目状の頭髪も印象的だ。この仏像には五臓六腑(内臓)も体内に納められており、模型が展示されていた。「聖地寧波(ニンポー)展」では他に京都泉涌寺の楊貴妃観音などが間近に見られ、充実した奈良の展覧会だった。