2022年6月25日土曜日

特別展「最澄と天台宗のすべて」⑨(大山寺観音菩薩)

 

京都国立博物館平成知新館の2F菩薩遊戯座像以外にもまだまだみるべき仏像が展示されていた。この大山寺観音菩薩もそのひとつで、飛鳥時代から霊峰伯耆大山の中腹に位置する天台宗別格本山大山寺に伝わる名品だ。U案内人も中国製だと断定したほど、優れた技術力に裏打ちされた仏像だ。この中国・北宋時代の仏像は化仏を配した大型宝冠を戴き、両肘を屈して手を前方に差し出し、左手に水瓶を、右手に宝珠を執る。精緻な造りの胸飾や瓔珞で全身を飾る。類似の作例は中国上海博物館にあり背筋を伸ばして両肘を張る姿勢や鋳造方法が似ているとのこと。伝来は北宋・大理国・遼とあり最近では明州で盛んに造像された普陀山観音像として造立された観音像として伝来した可能性が指摘される。他にも気になる仏像があるので先を進んだ。

2022年6月18日土曜日

特別展「大安寺のすべて」④伝不空羂索観音

 

ニコニコ美術館でN藤研究員が言っていたが、この伝不空羂索観音も8本の腕が後補で東大寺の不空羂索観音のようにひたいに第三の目がないことから尊名が変わった可能性があるとのこと。図録によるとまぶたのうねりが強く、面幅の広い顔立ちは大安寺の木彫群の中でも異色であり、太づくりの体つきも一連の木彫群にみる胴を絞って腹部の張りを強調した表現と趣を異にしている。太ももに別の衣をつけているように見えるのは大安寺の一連の仏像群に見られる裙を帯で締めて折り返す形式が崩れたものだとのこと。髻は荒彫した上に木屎漆を盛りつけて髪筋を刻むが、同様な手法は伝馬頭観音・十一面観音にも見られる。彩色は剥落が著しいが、着衣部に草花で埋めた丸文や小花文が見られる。さすが快慶でお馴染みの山口学芸員の解説だ。細かな描写によるこの仏像の全体像を説明する手法に舌をまいた。

2022年6月11日土曜日

雙林寺の薬師如来

 

京都国立博物館を出て以前から気になっていた円山公園にある雙林寺(そうりんじ)に向かった。京都非公開文化財特別公開をやっておりコロナで中断していた檀家のお嬢さんによる説明がやっていた。雙林寺は桓武天皇勅願で最澄創建の京都で最古級の天台宗寺院だ。日本で最初の護摩祈祷道場といわれている。拝観料を払って絵葉書を求めたが、この額絵のみとのことせっかくのご縁で購入して、お嬢さんの説明を聞いた。仏像はカヤの木の一木造りで像高85センチ、体格はがっしりとしているが、とても優しいお顔をされていた。お嬢さんがとくに強調していたのが翻羽式衣文で9世紀の仏像の特徴を備えている。歴史のある寺なのに境内が狭いのは隣に太閤秀吉の妻ねねの高山寺ができるにあたり広大な境内を献上したとのこと。京都人のしたたかさを感じ、お寺を後にし、ぎおん十二段屋の大えび天丼を食べに祇園に向かった。



2022年6月3日金曜日

特別展「大安寺のすべて」③(伝楊柳観音)

 
ニコニコ美術館でN籐研究員が言っていたが、頭に伝がつくのはのちの時代の後補で尊格変わった可能性があったためとのこと。忿怒の表情からとても観音様に見えないが、彫られた首飾りからキラキラした宝石がまるでちりばめているようだった。髻が後補のため、以前は馬頭観音の馬が表されたという説もある。またN籐研究員がへそが彫られいないことから薄布まとっている可能性が指摘されたいへん興味深かった。そのほか足元に板状のものは東博で見た踏み割り蓮華座だといわれるが、どうみてもサンダルのようで、横に切り込みが入っていることから、阿修羅のはいいていた草履のようにも思われたが鼻緒の痕跡はないとのこと。なかなか謎が深まった楊龍観音であった。