平成22年の夏、平成25年秋、そして今年の春と室生寺釈迦如来にお会い
しているが、いつ見ても素晴らしい仏像だ。しかも今回は露出展示で東博本館11室に展示されていたので、友人とともに仏像に感動して立ち止まってしばらく見ていたほどだ。なんといっても着衣の翻羽式衣文(ほんぱしきえもん)がすばらしく図録にも一木造の真骨頂と書かれていたのもうなずける。今回改めて知ったのだが、室生寺は平安京に遷都した桓武天皇が皇太子の時、病気平癒を祈祷して造られたお寺で、当時の本尊がこの釈迦如来だ。長く客仏だと言われてきたが、東博も慎重に「創建当初の本尊であった可能性がある」と言及している。今の本尊は金堂の釈迦如来だが、今回の特別企画のコンセプトでは本尊は奈良でそれ以外この特別企画でご覧いただきたいとのこと。本尊が東博で見られないのが残念だが、本尊級のすばらしい仏像が目白押しなので何度も足を運ぶ人が多いというのもうなずける。多くの写真家がこの釈迦如来の横顔の素晴らしさを作品で表しているが、今回じっくり見て納得がいった。室生寺の十一面観音や地蔵菩薩も気になるので次の展示作品に向かった。
毎年夏には遠出を計画している仏像クラブだが今年は満を持して日光山輪王
寺を参拝した。平成25年に末寺の中善寺に立木観音を参拝した以来5年ぶりになる。東武日光駅で観光ガイドのおじさんから入手した情報によると本日は三代将軍徳川家光の墓所があり仏教美術の宝庫である「大猷院(だいゆういん)」が午前中のみの参拝のため急いで世界遺産めぐり手形を購入してバスに乗り込んだ。輪王寺に着くとすぐ常行堂に参拝し平安時代の阿弥陀五尊像を拝観した。その後、「大猷院」に向かい仁王門の金剛力士、二天門の持国天・広目天、夜叉門の4体の夜叉を参拝して、重文の唐門から「権現造」の国宝拝殿の中に向かった。大猷院は家光が徳川家康の東照宮より派手にならないように黒を基調とした拝殿になっており落ち着いた感じがよかった。その後三仏堂に向かい増高7.5メートルの阿弥陀と千手・馬頭観音を拝観した。9年の修復を終え今年から参拝できるようになった三仏尊は地下の回廊から見上げると、とても迫力があり結縁もでき参拝できてよかった。お寺の僧によると修復に修復を重ねたためいつの時代のものかわからないとのこと。以前参拝したU案内人は様式からして室町時代を下らないだろうという見解だった。輪王寺だけで2時間参拝したので駅前の食堂に向かい湯波づくしの料理を食べながら今見て来た世界遺産輪王寺についておおいに語る仏像クラブの面々だった。
岡寺の開基は飛鳥時代後期から奈良時代初頭に活躍した義淵僧正だが、義淵
僧正はかつて天武天皇の息子で壬申の乱に活躍した草壁皇子と共に育ったため岡本宮を与えら岡寺を創建したとのこと。この仏像は創建当初から伝えられた仏像で岡寺の高さ5メートルの本尊如意輪観音の胎内仏として伝えられた。東大寺にも聖武天皇の念持仏で同様の菩薩半跏像が伝えられているがこちらは岡寺の歴史にかかわる遺品としか図録には書かれていないが、念持仏であったのか。義淵僧正が草壁皇子に関わることからその母で天智天皇の娘で天武天皇の夫人持統天皇ではないかと私は考える。早くに息子草壁皇子を亡くし、孫の聖武天皇の成長を祈ったのではないだろうか。仏像を前そのようなことを考え次作品に向かった。
先週の土曜日、以前楽しみにしていた特別企画「奈良大和四寺のみほとけ」
を鑑賞しに東博に出かけた。この企画展では奈良県北東部に所在する岡寺、室生寺、長谷寺、安部文殊院の四寺から国宝4件・重文8件を含む名品を展示するとのこと。今年の春に「うましうるわし奈良キャンペーン」を奈良大和四寺でやっており品川駅のサムネイル画像でご本尊の姿を毎日見て盛り上がっていたが、ついに室生寺の十一面観音や釈迦如来に再会できると思いあいにくの天気だったが心晴れやかに東博に向かった。東洋館VRシアターで「空海祈りの形」をみてから東博本館に向かうと室生寺釈迦如来の横顔の大きなバナーが見えて来た。いつもの11室に入ると国宝・重文のすばらしい仏像であふれていた。入口には銅造の長谷寺十一面観音が展示されており中のガラスケースには岡寺の名品、菩薩半跏像が展示されていた。露出展示のコーナーでは岡寺の義淵僧正や国宝室生寺釈迦如来が展示されており、一番奥にはなんと室生寺十一面観音と地蔵菩薩が薄さ数センチの光背をつけて展示されていた。向かって左の露出展示には長谷寺の灘田竜王や赤精童子がお寺で拝観するより間近に鑑賞することができた。室生寺では展示施設を建設中らしくこの機会を逃すと身近に十一面観音を鑑賞する機会を逃すところだった。観覧料620円でこれだけ卓越した造形の仏像を鑑賞する機会に恵まれ大満足で東博をあとにした。