以前、櫟野寺を参拝したとき気に入ったのがこの聖観音だ。この聖観音はいわ
ゆる「甲賀様式」前期の仏像で「すらりとした長身のプロポーション」「目尻の吊り上った厳しさを残す目」「裳の折り返しや腰布を独特のデザインで飾る」などの特徴がありこの仏像もみごとにあてはまる。像高は170センチ一木造りで台座に乗っているので見上げるようだ。図録を読んで気がついたのだが、耳の形が本尊とまったく同じで本尊像を参考にしたという。興味が尽きない聖観音だった。
今回の「国宝で読み解く神仏のすがた展」で1番気に入ったのがこの迦陵頻伽(
かりょうびんが)だ。この作品はアメリカからの里帰り作品で鎌倉覚園寺の薬師三尊の日光菩薩の今は失われた光背か薬師如来の迦陵頻伽だといわれている。芸術新潮の鎌倉特集に書いてあったが、覚園寺の迦陵頻伽が見てエンジェルがいると外国人観光客が騒いだと書いてあったが、覚園寺の月光菩薩の光背には羽根突きの迦陵頻伽が見られる。本作もたぶん羽根突きだったであろう。覚園寺の薬師三尊は仏師朝祐(ちょうゆう)の作だがおそらく本作も朝祐一門の製作であろう。アメリカに帰れば二度と見れない迦陵頻伽をいつまでもながめていた。
今週の日曜日に港区のほとけさまを見に仏像クラブで、出かけた。日曜日の午前中は東京はあいにくの大雨でコンビニで休憩をとりながらお寺に向かった。長谷寺(ちょうこくじ)にある麻布観音は江戸中期の仏像が東京大空襲で焼失し昭和52年に現代の彫刻家によって再建された 。予定では三田のお寺に行くはずだったが雨が激しくなったので根津美術館に変更して中国の仏像を観賞した。その後表参道のヘルシーなおそばを食べながら仏像について大いに語る仏像クラブの面々だった。
平成24年秋に櫟野寺を訪れた際、本尊以外で1番気に入ったのがこの地蔵菩
薩だ。東博のインスタグラムに会場の様子が載っていたが、照明で金色が光る地蔵菩薩が写っていた。図録を読んではじめて知ったのだが、こちらは櫟野寺の末寺である寛沢寺(地蔵寺)の本尊で、数千人の人々に浄財を募る「勧進」により造られた仏像だ。頭から体は一木その他は別材を組み合わせた一木から寄木に移行する時代につくられた仏像だが、穏やかな表情や薄い体躯のつくりに平安風が残っているという。私もこの表情にグッときた。音声ガイドみうらじゅん・いとうせいこうの櫟野寺仏像トークの中でもこの地蔵菩薩を取り上げており、本の見仏記の挿絵で「グッとくる地蔵パワー」との紹介されている注目の仏だ。平成30年の秋に33年の一度の大開帳があるとのパンフレットを甲賀市職員の忍者から出口の甲賀市の会場特設ショップでもらったので、そのおりは甲賀三大佛とともに参拝したいと思う。日ごろの喧騒を忘れ穏やかな気持ちで会場をあとにした。
今週の日曜日、夏の頃から気になっていた県立金沢文庫の企画展「国宝でよみ
とく神仏のすがた」を鑑賞してきた。称名寺聖教・金沢文庫文書2万点が新国宝に指定されたことにより、同資料を通じて普段あまり見る機会の少ない個人蔵の神像や仏像、仏画などの仏教美術品を中心に紹介する企画展だ。金沢文庫ツイッターの情報によるとわざわざ海外から借りてきた作品もあり、この機会が最初で最後という展示品もあるという。メインイメージの弥勒菩薩の写真を見たときから、これはよさそうな展覧会だなとは思っていたが、出展数は少ないがこれほどまでよい仏が揃っているとは思わなかった。弥勒菩薩は解脱上人貞慶にかかわる仏像で興福寺の子院に伝来したが明治期に流出したものだ。仏の瀬谷さんお得意のうしろ姿が見える展示ケースの中に入っており、製作当初からの光背の装飾もみる価値がある仏像だ。またアメリカのコレクター所有の鎌倉覚園寺薬師堂の日光・月光菩薩の光背にいる迦陵頻伽(かりょうびんが)がなど見所が多く、ボランティアガイドの説明に思わず聞きほれてしまった。実に仏の瀬谷さんらしい展覧会だった。図録をかなぶんカフェで購入し、大満足で会場をあとにした。