2016年6月18日土曜日

観音ミュージアムの如意輪観音

3月まで開催されていた観音ミュージアム「長谷寺仏教美術の至宝-彫刻編-」で
は見たことが無い仏像が展示されていたが、そこで気になったのがこの如意輪観音だ。鎌倉の如意輪観音といえば、来迎寺の観音が有名だがここ長谷寺にもあるとは知らなかった。観音は室町時代の寄木造で如意輪観音の特徴である如意宝珠や輪宝などの持物が失われているのが残念だ。伝快慶作だといわれるが、一面六臂の体躯、足裏を合わせて座る「輪王座」など通例の姿で表現されるとともに、卵型の面部、やや高めに結われた髻、抑え気味ではあるものの動きのある衣文の作りこみなどから宋風の作例を意識して製作された尊像といえるだろう。また目にする機会があればそこらへんを意識して鑑賞したいと思う。

2016年6月12日日曜日

雪蹊寺の毘沙門天

若いころ四国を香川から徳島・高松と旅したとき最後に向かったのが高知市の
雪蹊寺だ。あまり期待しないで霊宝殿に向かいそこで出会ったのが運慶の長男湛慶の毘沙門天だ。このような都から離れた寺に湛慶の仏像がなぜあるのかと思った。毘沙門天の像高は166センチのほぼ等身大で残念ながら両手は失われているが、脇侍もすばらしい。毘沙門天像といえば運慶の願成就院の仏像が有名だが、湛慶の作風は運慶の力動観と快慶の絵画的な整斉感の融合にあり、さらに繊細・優美な王朝文化の伝統が加えられているといわれるが、有名な三十三間堂の千手観音などがその代表作だろう。本作も端正で迫力ある顔に優美さと柔和さを兼ね備えた名作だ。本作は来月イタリア開催の「日本仏像展」に出展され多くのイタリア人の心をつかむことだろう。

2016年6月4日土曜日

よみがえる仏の美展①

先週の土曜日仏像クラブで二子玉川の静嘉堂文庫美術館に「よみがえる仏の美」
展を見に出かけた。静嘉堂文庫美術館には近頃、山本勉先生が唱えた運慶の十二神将のうち7体が所蔵されており、そのうち4体が修理完成し披露されるという。美術館の周りは緑豊かな環境に恵まれていて別世界にまい込んだようだった。会場の中央のガラスケース4つに像高80センチぐらいの十二神将がそれぞれ展示されていた。1番右側の寅神の右手を高く振り上げたポーズを見て、U案内人は「運慶作であることを確信した」とやや興奮して語っていた。この十二神将は昨年拝観した京都浄瑠璃寺から流出したもので、秘仏薬師如来を守る十二神将として製作され、明治になり流失した仏像だ。今回は「修理完成披露によせて」との副題がついていたように展示品の修理過程もパネル展示されていた。十二神将も「静嘉堂120選」図録の写真に比べても色彩がよく修復されこくなっていた。若冲が手本にした「文殊・普賢菩薩像」などの仏画を鑑賞して展覧会をあとにした。昼食で寄ったおそばやで食事をしながら運慶についておおいに語り合った仏像クラブの面々であった。