2012年11月25日日曜日

善水寺の兜跋(とばつ)毘沙門天

京都・近江の旅2日目午後、櫟野寺(らくやじ)のあとタクシーを飛ばして善水寺に向かう。ここは「見仏記」のなかで「いい仏、めじろ押し」と書かれていた寺院だ。期待が高まるなか受付に向かうと、東京日本橋で開催中の「近江路の神と仏名宝展」ポスターが貼られていた。展覧会場で善水寺の誕生仏を見かけたのを思い出した。参道を進むとわらぶきの屋根も厳かな立派な本堂があり、中に入るとすごかった。重々しい厨子を中心として、鎌倉時代の十二神将から藤原時代の四天王、また同じく本尊脇侍としての藤原時代の帝釈天・梵天までずらりと並んでいる。外陣の両脇に立つ3メートルの仁王も迫力満点だ。住職に導かれ裏堂に回るとそこにも仏像がずらりと並んでおり、「神仏います近江」のサイトで目にした兜跋(とばつ)毘沙門天が安置されていた。兜跋(とばつ)毘沙門天といえば、東寺の像が有名だが、この毘沙門天はむき出した目以外がどこか優しいつくりだ。その場では気がつかなかったが、金箔がわずかに残っていると見仏記に記載してあった。帰りがけにご住職に「近江若狭の仏像」(JTBパビリッシング)で見かけた光背がきれいなご本尊の次回の御開帳の時期をお伺いすると未定とのこと。しかし最澄関連の展覧会には出展することがあるので、その折に見てくださいとのことであった。ご本尊の絵葉書を購入して次のお寺に向かった。

2012年11月23日金曜日

六波羅蜜寺運慶の地蔵菩薩

京都・近江の旅一日目、最後に向かったのが六波羅蜜寺だ。六波羅蜜寺には京都に珍しい運慶の地蔵菩薩を拝観するためだった。鎌倉の仏像展では運慶の父康慶の地蔵菩薩に出会ったばかりだったので、親子の作風の違いがよくわかるのではないかと期待した。収蔵庫に入ると有名な空也上人を飛ばして真っ先に運慶の地蔵菩薩の前に立った。半目がゆったりとしている。山本勉先生によると、運慶が父康慶の菩提のために造った可能性があるとのこと。穏やかな表情はそこからきているのだろうか。柔らかな力で閉じた口元も、いかにも落ち着いた感じだ。見仏記によると夢見地蔵というニックネームは見事だとのこと。ゆっくり運慶の地蔵菩薩を拝観したあと、思ったより小さな空也上人像や運慶・湛慶(たんけい)像を見た。秘仏の十一面観音は明日御開帳で残念ながら見れなかったが、夕方になりだいぶ冷えてきたのでその日の宿に向かった。

2012年11月17日土曜日

檪野寺の十一面観音

今度の京都・近江旅行の目的のひとつが檪野寺の十一面観音の御開帳に合わせて拝観することだった。あらかじめ予約していたタクシーに金勝寺近くの道の駅にきてもらい一路檪野寺を目指した。参道の左にはびっしりと十一面坐像の小型版の石仏が並び、門には二体の仁王があった。珍しくガラス張りの中に鎮座している。白目の部分が赤いのも珍しく迫力がある。案内の方から本堂に入るよう即され、入ってみると御開帳の日らしく大勢の人が中で待機していた。みうらじゅんも見れなかった、十一面観音に出会った。像高3メートル以上十一面観音が厨子に少し窮屈そうにどっしりと鎮座している。如来のような落ち着きと重量感を漂わせて、まさにこの地域の天台文化の繁栄を物語る優品だ。檪野寺には他にも優れた仏像が残されており興味が尽きない。像高170センチの聖観音は桧の一木造りで立ち姿が美しい。薬師如来の像高222センチの大型で藤原期の丈六の如来像だ。白洲正子展に出品された田村毘沙門天や平安期末の味のある地蔵菩薩など見所が多い。名残惜しいが、次の寺に移動するため、檪野寺を後にした。

2012年11月10日土曜日

長講堂の阿弥陀三尊

先日の京都・近江の旅一日目の午後知恩院の後に行ったのが長講堂だ。ここも京都非公開文化財特別公開のひとつで、正式には法華長講弥陀三昧堂といい、後白河法皇木造を初め貴重な文化財が拝めるお寺だ。順路に従って文化財を拝観し、それぞれに若い女性から説明を受けるシステムになっている。本堂に入ると中央に半丈六の阿弥陀如来・観音菩薩・勢至菩薩の三尊形式の仏像が祀ってあった。赤銅色で、円光背には雲がたなびく。説明によると定朝の流れをくむ院派の代表仏師「院尊」の作で、脇侍の観音・勢至は半跏の形で、宝冠の模様も細かく華美で、いかにもたおやかな浄土の姿を示している。次に説明をうけたのが像高60センチ法然上人と善導太子だ。実に興味深いことだが、法然・善導両方の腹はくりぬかれ法然には勢至・善導には阿弥陀如来が入っている。 善導太子は衣が金にグラデーションしており、まさに仏になる瞬間を表している。最後に運慶の子孫が彫った江戸期の後白河法皇像を見て、長講堂をあとににした。

2012年11月3日土曜日

金勝寺の軍荼利明王

本日、近江の仏像を巡りをした。まず最初に行ったのが、かの白洲正子をうならせた、軍荼利明王(ぐんだりみょうおう)がある金勝寺だ。京都を朝出て、栗東よりこんぜシャトルバスで金勝寺に向かう。金勝寺につくとあたりは深山幽谷の雰囲気を漂わせ場所で、軍荼利明王がある二月堂に向かう。小さな御堂いっぱいに立つ4メートルぐらいある明王像に恐れおののいた。目を大きく見開き、歯をむき出す。8本の手のうち前二本を交差し、よく見ると手のひらにも目が刻まれていた。本堂の釈迦如来や虚空蔵堂の虚空蔵菩薩も大きく圧倒された。見どころが多い金勝寺をあとに、タクシーが待つ道の駅こんぜの里りっとうに向かった。

2012年11月2日金曜日

安楽寿院の阿弥陀如来

本日から京都近江の仏像めぐりが始まった。京都についてまず最初に向かったのが、伏見の安楽寿院だ。ここは平安時代の鳥羽離宮の跡で、庭の礎石などそこかしこに雅な雰囲気を漂わせたお寺だ。本尊の阿弥陀如来も鳥羽法王の念持仏で長い間秘仏だったため上品な金色に輝いていた。桧の寄木造で、表面だけでなく、くり抜いた内側にも金箔が押されているという。写真の感じとは違い自然な色合いは白熱灯をLED照明に切り替えたからだという。現代の科学と平安仏のコラボに感動して、次のお寺に向かった。